秀808の平凡日誌

第15話 過去

第15話 過去


荒廃都市ダメル

 その地下にある地下遺跡の最深部で、4人の冒険者と一匹の「赤い悪魔」が対峙していた。

 その赤い悪魔は、上半身は悪魔、下半身は蜘蛛のように手が6本足の代わりをしており、竜のような尾をはやしていた。

 そして、とてつもなく大きい。

 普通の人間の8倍はある大きさだ。

 赤い悪魔…ロシベルは、4人の冒険者に向かって話した。

「ほぉ…お前達、私に何の用だ?」

 そう言われると、リーダー格らしい剣士が柄から『クリスタルソード』を抜き、ロシベルに突きつけた。

「お前が『REDSTONE』を持っているということはわかっている。おとなしく俺たちに渡してくれれば、命はとらないでやる。」

 すると、ロシベルは笑いながら、言い返す。

「ハッハッハッハッハ!!私に勝てるとでも思っているのか?…いいだろう、私を倒せたら渡してやろうではないか!!」

 そういうと、ロシベルの両手に魔力が集中し、巨大な火炎弾を形成した。

「…我炎で、骨も残さず業火で焼き尽くしてくれるわ!」

 そして火炎弾は剣士に向かってすさまじい勢いで飛んで行く。

 だが、それは触れる前に、巨大な光の盾にはばまれ、爆散した。

 仲間のビショップの『ミラータワー』である。

 ロシベルが驚愕してみていると、そのビショップは言った。

「…かけておいて正解だったな、フロスト?」

 フロストと呼ばれた剣士は、多少残念そうにため息をついたあと、

「…だな、こうなったら倒すしかないみたいだな…いくぞ!メキジェウス!キャロル!ファントム!」

 そして激戦ははじまった。

 フロストは『ファビス』を前に構えながら、ロシベルに『タンクラッシュ』で突っ込んでいく。

 ロシベルはその巨大な腕で、フロストを叩き潰そうとするが、潰される直前、フロストの動きが加速しそのまま懐にもぐりこむ。

 ファントムのかけた『ヘイスト』である。

 そのまま胴体部にもぐりこみ『スウィングインフィニティー』で、ロシベルの脚部を切り裂く。

 体制の崩れたロシベルに、キャロルは『マシーンアロー』ファントムは『ファイアーボール』を体に撃ちこむ。

 だがそれではロシベルはひるまない。

 体制を立て直すと、尾を振り回してきた。

 フロストは咄嗟に『ファビス』でその攻撃を防ぐが、にぶい衝撃と、体中の関節部が悲鳴をあげているのに気づく。

 そしてロシベルが、フロストを再び叩き潰そうと腕を上げる。

 だが、腕を上げた直後、光の十字架がロシベルにふりそそぎ、その巨体を貫いた。メキジェウスの『ジャッジメントデイ』だ。

 それで目をやられたのか、ロシベルの振り上げられた腕の軌道はそれ、近くの地面を破壊するにとどまった。

 その腕をフロストは瞬く間に駆け上がり、一気に体の上へと登る。

 駆け上がっている途中、腰から『ドラゴンの心臓』をとりだし、一気に食らいついた。

 そして胴体に迫ったと思うと8人に分身し、同時に突き攻撃を浴びせかける。剣士のスキル『パラレルスティング』だ!それを何回も連続して容赦ない攻撃を浴びせ掛ける。

 大量の黒い血飛沫が舞い上がったと思うと、ロシベルはそのまま動かなくなった。

 フロストがその胸元を探り、『赤い石』をとりだし、ファントム達に向かう。

「これが『REDSTONE』…これで、世界は平和に…」

「ああ、だがその前に、それを国王に提出せねばな。大天使様に渡すのはその後だ。」

「そうか、なら見栄をはって故郷ブルンネンシュティグに…」

 フロストは自分がその言葉を言い終わる直後、背中からにぶい衝撃を感じた。

 ロシベルが瀕死の力で、背中を鎧ごと爪で引き裂いたのだとわかった。

 フロストはそのまま後ろに倒れ、ファントムが驚愕の目でフロストに駆け寄る。

「フロスト!…おのれ、ロシベル!!」

 そしてファントムの放った『メテオシャワー』に、ロシベルの体は粉々に吹き飛んだ。

「おい、大丈夫か!?…メキジェウス、早くフロストを…」

「…いまやっているが、傷の広がりが早い…これでは…」

 たしかに、『フルヒーリング』をかけているのだが傷は塞がる気配はなく、真っ赤な血がドクドクと背中からあふれ出る。

 フロストはかすれた声で、呟いた。

「…2人とも…俺は…もう…ダメだ…」

「何いっている!?助かるかもしれないだろ!?」

「…自分のことは…自分がよく知ってる…俺は…死ぬんだ…」

「…その通りだ、ファントム。『リザレクション』すら効果がないんだ…」

 まさか、といった顔でファントムは立ちすくむ。

 フロストは、手に持っていた『赤い石』を震える手で掲げる。

「ファン…トム…これを…俺の代わりに…王へ…」

「…………ク…」

 ファントムが顔に手をあて、涙を流しながら片手でそれをうけとると、フロストは今度はキャロルに向かって話す。

「キャロ…ル…ごめん…な…最後まで…一緒にいて…やれなく…て…」

「フロスト…」

「…お前…俺より…いい…奴…みつけ…ろよ…な……」

 そう言ったきり、フロストは目を閉じた。

 そして、何も話さなくなってしまった。

 彼…フロストは、死んだのだ。



 その喪失感、絶望感がくる、といった時、キャロルは目を覚ました。

 体中には汗をたくさんかき、息もあらい。

「…またあんな夢を見るなんて…」

 そして窓から見える星空を見ながら、呟いた

「…ラムサス…か…」

 そして,彼女はまた眠りについた。


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